不動産取引でIT重説の社会実験が開始。メリットとデメリットは?

令和元年10月1日から、不動産を売買する場合に宅地建物取引業者が行う重要事項説明について、テレビ電話などインターネットを利用して行う「IT重説」の社会実験が始まりました。

IT社会を反映した実験といえそうですが、IT重説にはどんなメリットがあり、不動産取引をこれからどう変えていくのでしょうか? 宅地建物取引士の高幡和也さんが解説してくれました。

IT重説とは?

重要事項説明

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不動産を売買したり、賃貸したりする場合、宅地建物取引業者はその当事者に取引物件や取引条件の重要な事項(権利関係、法令上の制限、物件の説明、取引の内容など)を、宅地建物取引士によって説明しなければならない義務を負っています。これを重要事項説明といいます。

これまで対面で行うこととされてきた重要事項説明を、パソコン、タブレット、テレビ会議システム等を利用して、対面と同様に説明・質疑応答が可能な環境で行う重要事項説明をIT重説(ITを活用した重要事項説明)といいます。

10月1日から始まった売買取引のIT重説社会実験とは?

IT通信

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不動産の売買取引におけるITを活用した重要事項説明に係る社会実験は、令和元年10月1日から1年間の予定で実施されます。対象は個人を含む土地や建物の売買取引で、対象物件の制限は設けていません。

ただ、IT重説を行うためには、説明をする取引士側、そして説明を受ける顧客側の双方に一定の「IT環境・使用機器の性能」が必要です。

例えば使用する端末機器の画面には、双方の姿が互いに明確に判別できるくらいに映し出されなければならないため、十分な解像度を備えたカメラが必要となります。
また、説明内容をきちんと判別したり、それに対しての質問内容を明確に知るために、双方の音声がはっきりと分かる性能のマイクも必要となります。

これらの性能を有したIT環境や設備を、事業者側・顧客側双方が準備できなければIT重説は行えません。
また、社会実験の結果について検証を行う観点から、登録事業者はIT重説の実施状況について録画・録音する必要があります。

国土交通省のホームページ「登録事業者募集・決定(個人を含む売買)」によれば、売買取引におけるITを活用した重要事項説明に係る社会実験に参加するのは登録事業者59社(令和元年8月27日時点)です。

賃貸ではすでに本格運用されているIT重説

自宅でIT通信

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賃貸の取引については、平成27年8月31日より平成29年1月31日までの約1年5か月間の間「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験(IT重説社会実験)」を行い、その後、平成29年10月1日からは本格運用が始まっています。

国土交通省では、IT重説の主なメリットを下記の4月つに分類して説明しています。

1:時間コストや費用コストを軽減することが可能
2:日程調整の幅を広げることが可能
3:自宅等のリラックスできる環境での重説が可能
4:本人が外出できない場合でも重説が可能

今後は、このIT重説のメリットが賃貸取引だけではなく売買取引でも受けられるようになるかもしれません。

IT重説の登場で今後の不動産取引はどうなる?

パソコン

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IT重説にはメリットだけではなく、そのデメリットについてもさまざまな意見があります。

例えば、「IT重説中に通信障害が発生したり、通信機器が故障したりすると手続きが中断される」や「重要事項説明が重要視されなくなる」「インターネット上で取引のすべてが完結してしまうと、現地や現物の確認がおろそかになる」などの声も聞かれます。

しかし、今回の社会実験を通して、懸念されているIT重説の問題点の改善や、仕組みづくりがしっかり行われれば、IT重説は将来の不動産取引のあり方そのものを変えていくかもしれません。

IT重説がより安全に、より身近なものになっていけば、単に重要事項説明に対するコストや時間の削減等に役立つだけではありません。
その仕組みをさらに発展させ活用することで、将来的には重要事項説明だけにとどまらず、住宅ローンの手続き・さまざまな契約手続き・登記に関する手続きなど、土地や建物を対象にした取引全般がインターネット端末を使って行えるようになるかもしれません。

書類

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実際に賃貸取引については令和元年10月1日から重要事項説明書等の「電磁的方法による交付」の社会実験も始まっています。
これまで大量の紙(書類)が必要で、ハンコ主義だった不動産取引も、時代ニーズに合わせて少しづつ変化しつつあるのです。

【参考】
※ 国土交通省「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験のためのガイドライン」

Source: Sumai
不動産取引でIT重説の社会実験が開始。メリットとデメリットは?