「別荘付」で客を呼ぶ。賃貸マンションの新しいカタチ

今後の人口減少などもあり、賃貸マンションの大家さんの間では、入居者の取り合いの加速を懸念する声が多いようです。

世田谷の賃貸マンションの大家・アサクラさんもそのなかのひとり。経営するマンションは築50年を過ぎていますが、近所では日々新しいマンションが建設されているといいます。

そんななか、生き残っていくためにアサクラさんが考え出したのが「別荘付き賃貸」というアイデア。東京のはずれの山奥にある小屋を、どう魅力的にリノベーションし「別荘」にしたかを紹介してもらいましょう。

工事前の山小屋はベニヤ板がむきだしの内装

工事前の山小屋の外観

「別荘付き賃貸」……この言葉から連想するのは、高級マンションと海沿いのヴィラの組み合わせかもしれませんが、当然ながらそんなゴージャスな話では全然ありません。
便宜上「別荘」と呼びましたが、元となる建物は祖父が建てた家のわきにある小さな書庫。

すでに築30年ほどになる、ワンフロアわずか6畳ほどの小屋です。ごらんのとおり、別荘どころか、家と呼ぶのもためらわれるサイズ感なので、僕は愛着も込めて「山小屋」と呼んでいます。

工事前の山小屋の内装1F

本を置くために建てられたせいか、内装工事はほぼなし。壁はベニヤ板がむきだしで工事中のように見えます。

工事前の山小屋の内装2F

祖父が亡くなって以来、ただの物置と化していたこの小屋を活用しようと思い立ったのが2017年の夏のこと。

山小屋周辺の景色

別荘地とくらべて都心からのアクセスもよく、夏も静かで涼しく過ごしやすい環境を入居者のみなさんにも提供できたら面白いサービスになるのではないか、と考えたのです。

計画から工事を経て運用開始まで2年がかり

足場を組んで外装工事中

2017年に計画を練り始め、2018年の春から秋にかけて小屋をまるまるリノベーションしました。
足場を組んでおこなう屋根と外壁の修繕はもちろん、トイレやシャワーボックスなどの水まわりを設置するため、大工さんの力を借りました。

造作中の壁

床や壁などの内装仕上げは、僕がDIYでおこないました。

DIY風景

DIY風景

DIY風景

ところどころ素人仕事の粗は目立つものの、経費はかなり削減できました。

工事が終わったのが2018年の10月も終わろうとする頃。年が明けて2019年の春、家具や家電などを少しずつ設置していき、夏前にようやく宿泊の準備が整いました。

自慢は外の竹林が臨める大きな窓

工事後の山小屋の外観

こちらが、生まれ変わった山小屋。汚れが目立ちがちな白の外壁は、黒で塗装してだいぶ印象が変わりました。

内装はというと、

工事後の山小屋の室内1F

工事前の素っ気ない内装とくらべて家らしくなりました。なんといっても自慢は、外の竹林が臨める大きな窓。

窓のビフォーアフター

左が工事前、右が工事後

腰窓と壁の一部を撤去し、一枚ガラスの大窓を設置しました。狭くて小さい小屋ですが、外の景色はこの立地ならではだと思います。
窓の交換はそれなりに費用がかかるのですが、やったかいがありました。

窓辺のロッキングチェア

この窓のおかげで、6畳の狭さがだいぶ緩和されました。ロッキングチェアに座って、のんびりと外を眺めているだけで都会とはちがう時間の流れを感じることができます。

水まわりはコンパクトでも清潔感ある空間に

ミシン台を活用した洗面

宿泊に必要な最低限の水まわりも用意しました。祖母が愛用していたミシン台をリメイクした洗面。ボックス貼りのタイルはDIYで施工しました。

タンクレストイレ

トイレは狭い空間を考慮してタンクレスに。丸い窓でアクセントをつけました。

シャワーブース700

シャワーボックスはサンワカンパニーの「シャワーブース700」。ミニマムサイズながら、使い心地もデザインもすぐれています。

2階はインパクト大の海外製壁紙でアクセントを

工事後の山小屋の内装2F

2階は木を現しにして山小屋らしい雰囲気に仕上げてみました。天井に木材を貼るのは一苦労でした。

イギリスのコール&サン社の壁紙「ノーチラス」

内装のアクセントにはインパクト大の壁紙をチョイス。以前ショールームを訪ねた海外壁紙専門店「WALPA」で購入したもので、イギリスのコール&サン社の「ノーチラス」という柄です。

工事後の山小屋の内装2F

家具を置いた後の様子です。天井が低めなので、家具は極力少なめにしました。

天童木工の低座椅子

唯一といっていい贅沢が、天童木工の低座椅子。その名のとおり、低めの座面がリラックスタイムにうってつけです。窓に向けて腰かけると外の竹林が見えます。

田舎の空き家の活用方法てしておすすめかも?

マンション内見用の案内

ようやく本格的に運用できる準備が整った矢先、世田谷のマンションで空室が発生しました。せっかくの機会なので、内見時に山小屋の案内も置いてみました。

内見に来たお客さんからは予想以上に反応がありました。どなたも「へえ、こんなのあるの?」と驚いている様子。

どんぐりの背比べになりがちな賃貸マンション選びのなかでは、かなり突出した個性として受け取ってもらえたようです。実際に入居を決めた方も、ぜひ使ってみたいと言っていました。

山小屋・外観

ただ、山奥にありますから、どれくらい使ってもらえるかはまだまだ分かりません。今後は、より使いやすい環境を整えていくことが課題になると思っています。

これからの時代、郊外や田舎の空き家問題が深刻化してくると指摘されています。そんな空き家を都内の賃貸マンションと組み合わせれば、新しい価値を生むことができるかもしれないと感じました。

Source: Sumai
「別荘付」で客を呼ぶ。賃貸マンションの新しいカタチ