建築家・田中ナオミさんの本棚を拝見!「宝物は亡き母の著書」

クローゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない「奥の院」を見せていただきます。

風が吹き抜ける書棚で開放感を演出

建築やインテリア、アートやデザインに特化した個性的な書棚を持つ住人は、建築家の田中ナオミさん。

住宅を専門として、生活者のライフスタイルを丹念に見据え、暮らしを楽しめる、家族が仲良く暮らせるというシンプルなことを大事にしている人気の建築家だ。

自宅に併設したアトリエの書棚は、建材・設備のカタログや設計に関する資料本が多いため、収納力が豊富だ。壁一面本だが、不思議と圧迫感がない。と、上を見ると空いている。

「棚を天井まで作ってしまうと息苦しくなるので、あえて上まで作らず、風も景色も抜けるようにしました。こうするだけで狭いところにも開放感がでるでしょう」

リビングの一角にあるキャビネットは知人のお下がり。夫婦で楽しめる画集などふたりの一生ものの愛読書を置いている

20 歳の頃からつくり、今も開くスクラップブック。『ELLE DECOR』やイタリアのインテリア誌『ABITARE』から切り抜いた

知人の建築家から譲り受けた海外の建築写真集。かつては洋書店が選書して、アトリエなどに引き売りに来ていたそう

予算がない、広さもないといった誰もが抱える設計の悩みを、田中さんは様々な工夫でひょいと乗り越える。その根底にあるのは前述の通り暮らしを見つめるあたたかな目線だ。

「家族と楽しい会話ができる。おいしい食卓を囲める。そういうささやかな瞬間だけど、ああ幸せだなと感じられる時間を過ごせる家を作りたい」

主張する家や派手な「作品」を作りたいのではない。住み手が笑顔になれる。それが一番作りたい家、やりたい仕事だ。

母が残した宝物、根底にある想い

建築家として、コピーライター、故・土屋耕一邸のリノベーションを担当。言葉のセンス、生き方、考え方。たくさんのことを学んだ

故郷の徳島で通っていた教会の牧師の奥さんから30 年前、結婚祝いにいただいた。今も自宅で一番使っている料理本

 

キッチンに最初に目を向けた建築家のひとり。男性が料理や暮らしを楽しむことを提言。彼の書く暮らしに憧れた

大好きな画家、マーク・ロスコの作品集。「川村記念美術館で彼の絵と対面したら泣ける」。美術館で画集を買うことも多い

イギリス人生物学者で、今は亡き母の著作。今も学生や研究者に読み継がれ、版を重ねている。中学時代、挿絵を描いた。

愛蔵本で、異彩を放っていたのは生物研究者向けに英語論文の書き方を解説したテキストだ。イギリス人生物学者だった亡き母の著書である。

両親は共に留学先のバークレーで出会い、日本で結婚した。

「徳島の狭い家で姉、兄、私と父の5人暮らし。家がうるさかったんでしょうね。母はひとりになりたいときは車の中で勉強していました」

研究者の卵たちが読む硬い専門書だが、随所にかわいらしい魚や兎の挿絵が添えられている。中学時代の田中さんの初仕事だ。

遊び心が潜む母の仕事は、住宅設計という仕事をとことん楽しむ彼女と重なって見えた。

住宅医としての初の著作。リフォームの本質を説いた渾身の作。「リフォームを簡単に考えないでほしいなという願いをこめました」

田中さんへのQ&A

Q どんなふうに書棚を分けていますか?
A 仕事場は、実用書や作品集、スクラップブックや仕事で使うカタログ。リビングは、革物作家をしている夫と共有の画集や写真集。廊下のすき間収納には、旅や電車で読む文庫を中心に。帰宅したら、そこにさっとしまえて便利なので。

Q プライベートではどんな本が好きですか?
A 建築関係の本が多いですが、生活まわりのことを描いたエッセイも大好きです。宮脇壇さんやこぐれひでこさんみたいに、暮らすことを愉しんでいて、生活の背景が見えてくるようなものに惹かれますね。料理本も、レシピではなくエッセイね。

田中ナオミさん
田中ナオミさん
建築家。1963 年、大阪府生まれ、徳島育ち。女子美術大学短大卒業後、エヌ建築デザイン事務所、藍設計室を経て1999 年、田中ナオミアトリエ一級建築士事務所設立。
2013年、一般社団法人・住宅医協会公認の住宅医1号に。生活者のライフスタイルを見据え、暮らしを楽しみ、家族と生活を主軸にした住宅設計を心がけ、幅広い層のクライアントから依頼がある。

取材・文 大平一枝
撮影 本城直季

※情報は2016年9月発売「リライフプラスvol.22」掲載時のものです

Source: Sumai
建築家・田中ナオミさんの本棚を拝見!「宝物は亡き母の著書」