漫画家・田中圭一さんの本棚を拝見!「人生の軸に漫画がある」

クローゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない「奥の院」を見せていただきます。(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季

『うつヌケ』の大ヒット後も、いたって冷静

ギャグ・パロディ漫画家の田中圭一さんは、自身のうつ病体験に着目したドキュメンタリー風コミック『うつヌケ』が2年前に大ヒット。今なお売れ続けている。2年間で34万部、流行語大賞にノミネートと話題をさらったが、ご本人はいたって冷静。都内の自宅兼仕事部屋はこぢんまりとした2DKで、穏やかな口調から地に足の着いた生活がうかがい知れる。

うつを患っていたときに出会った。本書をきっかけに、うつのトンネルから脱出。ベストセラーの自著『うつヌケ』が誕生するきっかけに

作者別に整理している。田中さんは『子連れ狼』の作者として知られる小池一夫劇画村塾の第1期生でもある

手塚治虫作品は、保存用と資料用に2 冊買うことも。『ブッダ』のように、年代による細かい絵柄の変化にも魅了されている

「20年前に買った『三つ目がとおる』は今でも、ぶれそうになると開いては模写をしています」。上の写真とともに“ 神”の棚

「学生時代にデビューし35年の間に、いろんな同業者を見てきました。浮き沈みの激しい商売。パッと売れてすごいマンションに住んだけど人気が陰って、でももう狭いところに住めないという人も。暮らしをダウンサイズするのはきつくて苦しいんだなあと、気づかされましたね」。だから、家賃は10万円以下と決めている。特任准教授として働く京都の大学近くで借りている家も、シンプルでコンパクトだという。

初版は1996年、湖川友謙著。学生時代に購入。第一線で活躍するアニメーターの作画解説本は初。多くの漫画家が本書で学んだ

手塚作品のキャラクターリストと、名作の第1話が収まる。たった18ページで濃厚なドラマを描く『ブラック・ジャック』に心酔

長い間、会社員との兼業で土日に漫画を描いた。つまり1日も休みがない。それは今も変わらない。「漫画を描いて、読者がいて、原稿料までもらえる。こんなありがたいことはないです」

人生の軸に漫画がある。衣食住やレジャーの優先順位は、それよりずっと下かもしれない。けれども、好きなことを生業にしている人の表情は感謝に満ちていた。

本宮作品の真骨頂。「熱血ものの漫画家だと思っていましたが、本書で優れたギャグ漫画家でもあると気づきました」

「ボクらの世代の漫画家の間違いなくバイブル。特に第20 巻の絵柄はとてつもないオーラを放ち、神がかっています」

人生を変えた10代の2大ショック

小学校4年か5年で読んだ。第5巻で絵が神がかり、子ども心にすさまじい完成度に震えた。「本書は漫画史の金字塔です」

小4で『デビルマン』を読み、大どんでん返しのストーリー漫画のすごさに目を見張った。また、高1で、女子の会話に入りたくて試しに読んだ『おしゃべり階段』で、くらもちふさこの描く人間ドラマの深さに衝撃を受けた。

「男子が木刀持って河原でケンカしているような漫画に夢中なときに、女子はこんな深い大人な世界で盛り上がっていたのかと」

現在はアシスタントが使っている机は両親からの就職祝い

いわく「デビルマンショックとくらもちショック」を、まるで昨日のことのように目を輝かせて語る。迷ったときは今も模写をするという名作漫画と、仕事用の机3台と、漫画の資料と、過去の自作に囲まれたこの部屋で、彼は10代の衝撃から始まった夢の続きを今日も紡いでいる。休みがあろうとなかろうと、まことにに幸福な生業である。

資料や表紙を担当した作品などを分類して収納。コンテナボックスは通販で購入した

いちばんよく使うペンは約10年愛用。世界堂かロフトで買うことが多い

アシスタントによる試し描きの跡

田中さんへのQ&A

Q この本棚は?
A 大阪のホームセンターで買いました。仕事のため東京と京都の二拠点で、週に半分ずつ生活しています。

Q 本はどこで買いますか?
A 今はもっぱらキンドルで、月に10冊ほど買います。毎週往復する新幹線の移動時間を、読書にあてています。数年前までは、池袋のジュンク堂の漫画の品揃えが充実しているのでよく通っていましたね。あとはヴィレッジヴァンガード。

Q どんな本を買いますか?
A ほぼ漫画です。仕事柄、最先端の作品も知っておかねばならないので資料としても読みます。初対面の人にはベストワンを必ず聞きます。思わぬ出会いがあるので。そのほかはノンフィクションが好きで小説はあまり読まないですね。

 

田中圭一さん
漫画家。1962年、大阪府生まれ。近畿大学法学部卒業。在学中、小池一夫劇画村塾に通い、22歳でデビュー。卒業後は会社員と兼業しつつ、漫画家として活躍。『うつヌケ』は‘18年、手塚治虫文化賞「マンガ大賞」の最終候補に。京都精華大学特任准教授。最新刊は『若ゲのいたり』(角川書店)。公式ツイッターアカウントは@keiichisennsei

※情報は「リライフプラスvol.33」取材時のものです

Source: Sumai
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