キッチン中心のリノベで、シニアでも生き生き暮らせる家に<建築家の提案>

家の南北を分けていた壁を取り払って、明るいLDKにリノベ

シニアのリフォームというと、体が弱ったときのためのバリアフリーリフォームを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、元気なときにこそ生き生きと暮らせるようなリノベーションも検討してみてはいかがでしょう。

「リノベーションに適齢期はありません。特におすすめしたいのは、古い家のありがちなキッチン、ダイニング、居間が分割された空間を、一室空間に再構成するリノベーションです。キッチンを中心にしたプランにすれば、明るく、使いやすい暮らしの空間が生まれます」
そう提案するのは、建築家の田中ナオミさん。
田中さんの手掛けた70代夫婦のための事例をもとに、シニアが暮らしやすいリノベの工夫を紹介します。

明るい、風通りが良い、動きやすい、掃除しやすいLDKに

リノベ前の間取り図

リノベ前の家の間取り図です。
元々の家は立派な玄関や客間のある、ゆったりとしたつくりの家でした。しかしテレビのあるリビングが南側を陣取っていて、家族が一緒に過ごすことの多いダイニングとキッチンは、北側の隅に追いやられていました。そして南北に風が抜けるのを邪魔する壁が南北を分断し、風通しを悪くしていたのです。

リノベ後の間取り図
そこで私は、今回のリノベーションでは、家族がいちばん長く一緒にいる場所を、いちばん居心地のいい場所にしよう!と考え、南側の特等席にLDを配置しました。そして南北を分断する壁も取り払って、キッチンとつなげたのです。その結果、今までの暗くて寒かったキッチンが、開放的で明るく居心地のいいLDKに。

この事例のプランでは、施主がさらに歳を重ねても快適に暮らせるよう、以下のような点を考慮しています。

  • いろいろな関係性の人が使いやすいように、対面式キッチンとアイランド型作業台を組み合わせた
  • 掃除をしやすいように、拭きやすい仕上げ材や下引き換気扇を採用
  • 脚立に上る必要がないよう、吊戸棚など高いところには収納を設けない
  • 夫婦がお互いの気配を感じつつ、同じ空間でも別々に過ごせる場所をつくる

住む人だけでなく、誰でも使いやすいキッチン

キッチンの内側に置いたアイランド型の作業台

この家では、対面式のキッチンにアイランド型の作業台を配置しました。
食材や配膳の準備を行える作業台がキッチンとは別にあれば、様々なものが同時に出ていても効率よく作業できます。通路も広く取ってあるので、数人が一緒に作業しても大丈夫。
またこの対面式キッチンは、ダイニング側から手元が見えません。片付けなどの途中で、食器や調理器具が出しっぱなしになっていても、気楽にLDへも出てこられる工夫です。

この形になってからは、今までキッチンに入ったことのないご主人も料理をするようになったとか。男の料理教室に通い、奥さまのために料理をつくってあげられるようになったそうです。
食事後の片付けも積極的にするようになって、「これが本当のバリアフリーだね」と、喜ばれています。

しかし子どもが巣立ち、夫婦で元気に暮らしていても、さらに歳を重ねて、体の自由が利かなくなったり、健康を損ねたりすることがあります。そんなときは自宅で他人のサポートを受ける可能性もあり、「遠くの親戚より近くの他人」がより大切になるかもしれません。
その場合、キッチンは家族だけでなく、友人や手伝ってくれる人などが、調理や片付けを手伝いやすくするのがポイント。そんなときにも、このキッチンなら遠慮せずに使ってもらえるのではないでしょうか。

夫婦それぞれのワークスペースも

夫婦でセパレートして使うワークスペース

キッチンとは別の話もしておきましょう。
毎日何時間も夫婦が同じ場所にいると、ときには息苦しさを感じることもあるかもしれません。
そんなときのことを考え、同じ空間でお互いの気配を感じながらも、別々に過ごせる場所を用意しました。
写真はリビングの一角にあるワークスペース。長いデスクカウンターを造作し、真ん中でセパレートして使えるようになっています。

夫婦2人で、毎日を快適に過ごせる家。これからの時代には、そんなリノベーションが必要なのではないでしょうか。

●教えてくれた人/田中ナオミ
一級建築士、NPO法人家づくりの会会員、一般社団法人住宅医協会認定住宅医。女子美術短期大学造形科卒業。エヌ建築デザイン事務所、藍設計室を経て1999年田中ナオミアトリエ一級建築士事務所を設立。著書に『片づく家のアイデア図鑑 快適な住まいをつくる収納と暮らしの工夫』(エクスナレッジ)、『住宅医のリフォーム読本』(彰国社)などがある

Source: Sumai
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